寄生獣 セイの格率

好きな漫画をひとつだけ挙げろと言われたら、いつだって迷いなく「寄生獣」と答える。それは中学1年の時から変わらない。もう何度繰り返し読んだのかわからない、考え方に最も影響を受けた作品。

アニメ化されたことは知っていたし、その後、映画化されたことも知っていたけれど、なんとなく見るのを躊躇っていた。妙なサブタイトルが付いていて、嫌な予感がしていたから。結局それのほとんどは杞憂だったが。

基本的には原作どおりだったこと、有機的な描画だったことはとても良かった。

ミギーにはどのような声が当てられているのか気になっていたが、良い方向に予想を裏切られ、あの声こそミギーだと確信できた。序盤ではほとんど無感情な話し方をしていたミギーが徐々に感情を持ち始め、新一のことを単なる宿主ではなく友人と次第に認めていく変化が声から伝わってきた。

特に、広川の目的を推測しながらやや興奮気味に語るシーンは、原作では独り言のように語るが、アニメでは新一に向かって語り掛けるようになっていて、互いの関係性の深まりを感じられた。

加奈の最期のシーンや田村玲子が赤ちゃんを手渡すシーンは、とても丁寧につくりこまれていて、原作では一度も泣いたことがなかったのに、アニメでは自然と涙が溢れてきた。

ただ、やはり、いくつかの不満はあった。

泉新一が眼鏡姿で顔立ちさえ違っていたことや、モブの美術部員や意味のないオリジナルキャラが村野里見の友人として登場したことには戸惑った。結局ストーリーには影響がなく毒にも薬にもならないから観るのをやめるほどではないが、だからこそ、無意味さが際立っていた。

なにもかも原作通りに作れば良いと思っているわけではなくて、光夫は(当時から古風だったから)現代風にアレンジするのはGOODだった。ただ、あまりに弱そうなヒョロガリだったのは残念。戦闘力を相対的に数値化したときの説得力がなかった。肉食え。

父親がタブレットを操作するシーンや、新一が授業中にスマホを操作して怒られるシーン、加奈と連絡を取るためにスマホを利用するシーンが追加されていたが、この作品ではスマホを登場させないほうが良かった。新一が何度も音信不通になるのが不自然になるし、田村玲子ならば積極的に有効活用するだろう。

現代(放映時の2014年)であることを強調するためとか、スポンサー契約の営業的な理由であるとか、そういったことは想像に難くないけれど、センスがなく下品に感じた。

後付けの冗長かつ強引かつ矛盾する設定以外、とてもよい作品だった。

アニメ『寄生獣 セイの格率』公式サイト