ビジネスモデル・ナビゲーター / オリヴァー・ガスマン, カロリン・フランケンバーガー, ミハエラ・チック

ビジネスモデルを分類、カタログ化して解説している本。

本書は事業やイノベーションのアイディアを研究する本として書かれているが、プログラマーがこれを読むと違った読み方ができる。

デザインパターンはオブジェクトに役割を与えて現実の事象をシステム化するが、それと同様に、ビジネスモデルを「データフロー」として捉えると、現実のシステムを高度化できるアイディアに繋がる。

時間があればこのテーマをもうすこし研究したい。

この本の序論として、かつて世界を席巻したはずの企業たちが安穏とあぐらをかいているうちに後続によって追いやられ、消滅してしまったことについて触れられている。イノベーションの重要性を説く文脈ではあるが、そこに列挙された企業たちのビジネスモデルと欠点や欠陥を知ることの重要さにも気をつけたい。

ITシステムも同様であり、レガシーをそのまま運用しつづけることにはメリットがありデメリットがある。一様にレガシーは悪とするのは思考停止であり、システムごとに判断しなければならない。利用者や運用者の意見を踏まえて要件・仕様を考え、経営者が判断できるように数字的な根拠を示すことがシステム屋に求められているはずだ。

システムだけではなく、技術についてもこの話は適用でき、栄枯盛衰がある。プラットフォームや用途ごとに主流の言語が異なるが、長らく特定の環境下において寡占状態だった言語でさえ、ゆるやかに死を迎えている。

日本語という自然言語でさえ、たった100年前の文字を読むには古文の知識が必要になる。

言語も技術もプラットフォームもシステムもビジネスモデルも生き物。この循環は変わることはない。

 

余談

これより古い年度のリンクがみつからなかったから2010年版を貼るが、手元には「2006年版 図解 業界地図が一目でわかる本」「2006年版 図解 世界の業界地図が一目でわかる本」の2冊があって、当時の国内企業・海外企業のシェアや資本・業務提携が業種ごとにまとめられていて、有名な上場企業、巨大な非上場企業たちを知るきっかけになった。

それにしても18年という歳月でここまで世界が変わるのかと驚くほどに、イノベーションの起きていない業種などない。

今になって読み返すと、すでに消滅した企業、シェアを大きく落とした企業、提携関係が変化した企業がたくさんあって興味深い。個々のビジネスモデルについては書かれていないが、ビジネスモデル・ナビゲーターの序論にかかれているように「これらの企業は自社を取り巻く環境の変化にビジネスモデルを適用できなかった」が結論だと思う。

それは業種という大きな単位ではなく、身の回りすべてに同じことが言える。