横山秀夫『陰の季節』『顔 FACE』

『陰の季節』

D県警シリーズ第1弾。刑事モノではなく、警察の内偵を主題にした短篇集。


天下り先を辞めようとしない大物OBを説得する警務課調査官「陰の季節」

お水と関係を持っている警察官がいるとの内部告発(デマ)の犯人を探す監察官「地の声」

お手柄をあげたばかりの似顔絵婦警の失踪を追う女性警部「黒い線」

警察に恨みを持つ市議が警察に復讐するとの情報を調査する秘書課課長補佐「鞄」


どれも警察という特殊な職業を生々しく描いている。

陰の季節 (文春文庫)

陰の季節 (文春文庫)

『顔 FACE』

「黒い線」のお手柄似顔絵婦警、平野瑞穂を主人公に据えた、D県警シリーズ第2弾。

第1弾『陰の季節』を読んでから第2弾『顔 FACE』を読んだので、感情移入がスムーズだった。


失踪後は半年間の休職、復帰後に広報課に配置転換となり、

新聞記者に特ダネを提供する内通者を調査する「魔女狩り

犯罪被害者支援対策室に配転となり、

放火事件が過去の記憶を呼び覚まし怯える女性と向き合う「決別の春」

三代目の似顔絵府警となった後輩に自分を重ねる「疑惑のデッサン」

銀行強盗訓練と同じ時間を狙った銀行強盗の犯人を追う「共犯者」

本部捜査一課強行犯捜査係に配転となり、

銃を奪うために交番勤務の婦警を襲った犯人を追う「心の銃口


心の傷を負った平野瑞穂が成長していく様が微笑ましく、どれも読後感が清々しい。

特に、最後の「心の銃口」は、登場人物の描写が素晴らしく、一番のお気に入り。

またいつか、彼女の活躍する作品を読めたらいいな。

顔 FACE (徳間文庫)

顔 FACE (徳間文庫)