和月信宏『るろうに剣心ー特筆版ー 上巻』

中学生のころ、友だちからもらってきたジャンプをボロボロになるまで読んだ。ボロボロを通り越して、3〜4分割くらいにモゲていた。特に、漫☆画太郎『学校』、なにわ小吉『王様はロバ』、ジャンプ放送局は何度読みかえしたのかわからない。わずかなお小遣いは、バドミントンのグリップとガットと、CDと、塾のバス賃になっていたから、ジャンプを買う余裕などまったくなかった。だから、『るろうに剣心』の原作は断片的にしか読んでいない。

もらってきたジャンプの『るろうに剣心』は黒笠編だった。だいぶ後になってから単行本を読んだ時に、連載されていた時とずいぶん違うな・・・と思った。鵜堂刃衛との戦いの前には(薫の息が続くのか心配になるほど)多く語っていたし、心の一方についてももっと解説されていたように思う。

そんなこんなで原作の記憶が曖昧なまま(強い思い入れがないまま)この漫画を読んだわけなのだが、それでも原作との世界観の差異との乖離が大きすぎて驚いた。巻末の「FREE TALK」に書かれている通り、原作の『るろうに剣心』の延長線ではない。同じキャラクターが異なる時間軸で生きている、パラレルワールドの話となっている。すべてのキャラクターの設定を変えているので、まったく別の話だと思って読んだほうがいい。

るろうに剣心』の原作は、少年漫画らしからぬ「繊細さ」が強かった。この単行本の剣心では繊細さよりエンターテインメント色が強くなっている。どちらを好むかは読み手次第。

この単行本には、キネマ版(パラレルワールドな剣心)と第零幕(薫と出会う直前の剣心)の2つが収録されている。ひとつ言えることは、第零幕は飛び抜けておもしろい、ということ。

るろうに剣心―特筆版― 上巻 (ジャンプコミックス)

るろうに剣心―特筆版― 上巻 (ジャンプコミックス)